舛添前知事の辞任に伴う東京都知事選が告示された。東京都知事選というと毎回のように泡沫候補(特殊候補、インディーズ候補)が多数立候補する。当選する見込みがないのに、なぜ立候補するのか?
はじめに「泡沫候補」を定義しておきたい。本稿では、当選する可能性・見込みがほとんどない立候補者を泡沫候補と定義する。
都知事選への立候補には供託金300万円が必要で、有効投票総数の10分の1の得票がなかった場合、供託金は没収される。前回(平成26年2月9日施工)の都知事選では、立候補者16人中12人が供託金没収になっている。すなわち、泡沫候補は供託金没収、すなわち少額とは言えない金銭的負担を負っていることがわかる。
今回の都知事選(平成28年7月31日施工)の選挙公報を読んでみる。候補者全21名のうち、20名の選挙公報を読むことができる。主義主張の内容はさまざまであり、都政とは無関係な内容を掲げる候補者もいるものの、どれも主義主張と言える内容である。ホームページを公開している立候補者については、その内容も確認した。
以上調べた内容から、泡沫候補は以下の3タイプに分類されると推測される。
(1)明確な主義主張があり、世の中を変えたいという意欲の感じられる候補者
明確な主義主張があり、世の中を変えたいという意欲は感じられるものの、政党推薦・公認候補、知名度のある候補と比べると、得票は厳しいと考えられる候補者。
(2)売名行為・宣伝行為のために立候補していると考えられる候補者
供託金300万円が没収されてもペイしている(供託金300万円が没収されても惜しくない)と考えられる候補者。
(3)自己顕示欲と社会的承認欲求を満たすために立候補している考えられる候補者
自己顕示欲とは「目立ちたい」という欲求であり、社会的欲求とは「社会的に認められたい」という欲求である。供託金300万円が没収されることは不可避であっても、自分の主義主張を述べたい、選挙期間中だけではあるものの「東京都知事選立候補者」として社会的に認知されたい、そんな欲求から立候補しているのではと考えられる候補者。
泡沫候補というと、ややもすると「無駄な存在」のようにとらえがちであるし、テレビ・新聞などの選挙報道でもほとんど取り上げられないものの、上記(1)のように明確な主義主張を持つ候補者もいるため、「泡沫候補」とひとくくりにして扱うべきではないと考える。上記(2)(3)のような候補者はともかく、(1)のような候補者を排するするようなことがあってはならない。