IIJmio meeting19(東京)レポート

2018年4月14日(土)にIIJ本社で開催されたIIJmio Meeting19に参加しました。フルMVNOの話、特にフルMVNO徹底解説がとてもわかりやすくて楽しかったので、以下にまとめていきます。

今回の発表資料は、2017年のスマホの話・MWC2018レポート・IIJフルMVNO徹底解説 (IIJmio meeting 19資料公開)で公開されています。

今回のプログラムは以下の通りです。

(1)IIJmio Update: 2018/1~(IIJ堂前さん)
(2)みおフォン教室: 端末? それならIIJmioでチェックしよう(IIJ永野さん)
(3)MWC2018現地レポート(IIJ磯邊さん)
(4)IIJフルMVNO徹底解説(IIJ大内さん)
(5)フリートーク(IIJ佐々木さん、堂前さん、大内さん、永野さん、磯邉さん)

(1)IIJmio Update: 2018/1~
まずは、お詫びから始まりました。

IIJmioで極端な速度低下が発生しています。顕著なのが平日昼休みで、元々遅かったのが、さらに低速になっています。IIJの想定を超えて通信量が増大しているのが原因とのこと。

設備増強について4月分予算は既に全額投入済みで、5月分予算についても前倒しで投入して増強を図るべく対応しているとのことですが、国際会議等が行われる時期(重要インフラ工事抑制期間)を避ける必要があるため、増強時期は5月中旬になる予定とのことです。

毎年4月になると入学・入社などに伴う新規契約のために通信量が増加することはわかっており、それを見越して設備増強を行っているものの、今回はそれを上回り、さらに契約数の伸びが見込み通りであるのに対し、通信量は見込みを上回って伸びてしまっているとのこと。ひとことで言うと、今まで契約はされているものの眠っていたSIMが使われるようになった(一契約で同時に通信されるSIMが増えた)、とのことですが、どのような背景事情でこのようになったのかはわからないとのこと。

ファミリーシェアプランのSIM3枚を今まではひとりで使っていたのが、入学に伴って子供が使うようになった、とかあり得るシナリオを考えることはできても、証拠がないため説得力に欠けます。うーん、なんででしょう。

もう一点の「ご利用料金の請求について」ですが、4月から請求前に与信をかけるようにしたところ、事前に想定していなかった事象、例えば、一部の即時決済型カードで今までよりも早いタイミングで請求が発生したり、請求元の会社名が変わってしまう、などが発生したとのこと。IIJでもまったく想定していなかった事象らしく、平謝りでした。事前に大きなアナウンスがなくWebサイトでのお知らせ(ご利用料金の決済に関するお知らせ)だけだったのは、トラブルが発生し得るような変更ではないから、との考えだったからなのかもしれません。

本件に関して、下記質問をmioqで投げて、フリートークで回答いただきました。

洗い替え(洗替)についてはこれまでもやっており、例えばクレジットカードの有効期限が更新された際など、ユーザー側の特段の手続きなしで、自動的にカード情報は更新されているとのことです。(洗い替えをやっていることは今回初めて知りました。)

(2)フルMVNOについて
2018年3月に発表され、順次サービスが開始されているフルMVNOについてです。

今回発表されたサービスは、法人向けの「IIJモバイルサービス タイプI」と訪日旅行者向け(日本人もパスポートを取得していれば利用可)の「Japan Travel SIM」です。なお「Japan Travel SIM」は、IIJ内ではJTSの略称で呼ばれているようです。

法人向けの「IIJモバイルサービス タイプI」では、ライトMVNOでは実現できなかった「SIMのライフサイクル管理(使わないときはSIMを休止して料金節約)」などが実現しています。

「Japan Travel SIM」では、利用者側にとっての大きな変化・メリットはありません。強いて言えば、販売価格が少し安くなったことくらいです。安くなったのは、従来型SIMだと、店頭在庫しているだけでコストが発生しており、その分のコストを販売価格に織り込んでいたためです。フルMVNO版SIMだと、店頭在庫中はSIMを休止することで在庫コストを圧縮できます。

店頭在庫時のコストを圧縮できるとのことで、商品の回転率があまり高くなさそうな場所でも販売が可能になり、結果として従来よりも販路が広がって入手性がよくなる可能性があります。またサンプルSIMの無料配布とかも実現するかもしれません。

フルMVNOのSIMがスマホ以外で広く使われるようになれば、現在の特定の時間帯(平日の12時台とか)に通信が集中する傾向が緩和されるようになり、結果として通信環境の改善につながることが期待できます。

(3)フルMVNO徹底解説
今回もっとも期待していたセッションです。しかも発表者が大内さんとのことで、期待に胸が高鳴ります。

構想段階からサービス開始まで4年近くかかっています。その間、大内さんはIIJmio Meetingのトークセッションをお休みして、フルMVNO開発に専念したとのことです。

楽天モバイルは、1年ちょっとで基地局建設を含めて第4の携帯電話会社として参入するとのことですが、本当にできるのだろうかと思います。大量の資金を投入してほとんどの工程を外注すれば実現できるのかもしれませんが、それでは楽天モバイル本体には技術の蓄積がなされません。技術をないがしろにする会社は嫌いです。楽天モバイルよりもフルMVNOのIIJの方を圧倒的に支持・信頼します。

フルMVNOを利用したサービスの拡充案です。やはり個人向けIIJmioへの導入に期待してしまいます。音声通話は遅れてもいいから、データ通信専用SIMに加えてSMS対応SIMもフルMVNO化してもらって、IIJmioに導入して欲しいです。

IIJのライトMVNOとフルMVNOのインフラの違いです。なお、ライトMVNOであってもフルMVNOであっても、IIJ~ドコモ間のPOI(相互接続点)は同じです。まずライトMVNOのインフラです。

フルMVNOのインフラです。IIJ側の設備にHLR/HSSが追加され、GatewayとしてDEA(Diameter Edge Agent,LTE用信号中継GW)とSTP(Signal Transfer Point,3G用信号中継GW)が設置され、OTA(Over The Air,SIMカードの情報を書き換えるシステム)とSMSC(Short Message Service Center,SMSを端末に送信するシステム)のシステムが追加されています。

IIJのフルMVNOの機能です。

・SIMライフサイクル管理/アタッチトリガー開通機能
・APN自動設定機能
・NTTドコモ網をHOME PLMNとして接続する機能
・キャリア名変更機能
・OTAによるSIM書き換え機能

まず、「SIMライフサイクル管理/アタッチトリガー開通機能」です。SIMを挿した端末がモバイル網に接続してきたのをきっかけにしてSIMの開通処理・課金開始処理を行う機能ですが、注意事項としては、LTE端末では再起動が必要(フライトモードON/OFFではダメ)とのことです。

「APN自動設定機能」とは、端末でAPNの設定をしなくてもモバイル網でAPN設定が降ってきて自動的に端末に設定される機能で、HSSから加入者情報を降らせる際にAPN情報を降らせることで実現しているとのことです。LTEではJapan Travel SIMのみ対応済み(法人向けは開発中)、3Gは開発中とのことで、例えば古いiPhone(5S/6/6S)では現状自動設定が上手く働かない(最初に3Gに接続に行くため)、iPhone7以降のiPhoneではAPN自動設定は働くものの、テザリング用のAPNは手動で設定する必要がある、などの注意事項があります。

なおフルMVNOのSIMを挿したiPhoneでは現状、iPhoneの画面左上の表示が4GではなくLTEになります。これはIIJ用のキャリア設定(キャリアバンドル)がなく、iPhone(iOS)のデフォルト設定でLTEと表示されるためです。ドコモ・KDDI・ソフトバンクの端末で4Gと表示されるのは、各社のキャリアバンドルに4Gと表示するための設定が入っていることによります。

「NTTドコモ網をHome PLMNとして接続する機能」ですが、NTTドコモ網へ実際にはローミングとして接続しているため、本来であれば端末にデータローミングの設定をしなければいけないところ、その設定をしなくても使えるようにする、言い換えると既存のライトMVNOと同等の使い勝手を実現するための機能とのことです。

「キャリア名変更機能」とは端末に表示されるキャリア名を変更する機能で、実現方法は(1)NTTドコモ網の機能を使う方法(2)SIM内の情報をキャリア名として表示する方法、の2種類があり、両方とも対応済みになっています。

NTTドコモ網で降ってくるキャリア名はデフォルトでは「NTT DOCOMO」もしくは「JP DOCOMO」とのこと。iPhone4S/iPhone5の時代(まだドコモがiPhoneを発売していなかった頃、要はキャリアバンドルにドコモの設定が入っていなかった頃)にIIJmioのSIMをiPhoneに挿して使うと、iPhoneの画面左上のオペレータ欄(キャリア名表示個所)に「NTT DOCOMO」とスクロールしながら表示されていたのは、ドコモ網で降ってきたキャリア名をそのまま表示していたからなのだろうと思います。

IIJのフルMVNOは、MVNEとして他社に提供することも可能とのことで、その際にキャリア名表示をIIJ以外に変更することが可能なのかという質問がフリートークでありました。提供先用にキャリア名表示をIIJ以外に変更することは可能とのことですが、そのための通信が発生することもあり、実現するかどうかは、提供先とIIJの相談次第とのことです。

「OTAによるSIM書き換え機能」とはSIM内の情報をIIJフルMVNO網側からOTAで書き換える機能で、電話番号やキャリア名の変更などが可能で、SMS-OTAによる方法は対応済み、IP-OTAによる方法は開発中とのことです。

SMS-OTAを利用したキャリア名表示変更のデモがありました。IIJ-IIJmio、IIJmio、IIJ25周年-IIJmio、とキャリア名表示を変更することができました。漢字も表示できていますが端末依存な一面もあるらしく、英数字だけの方が無難そうです。

(4)フルMVNOのSIMを見てきました。
休憩時間に、フルMVNOのSIMカードと、フルMVNOのJapan Travel SIMが刺さったiPhone Xを見てきました。

キャリア名にIIJと表示されると、すごくカッコよく見えます。IIJmioにも早く導入して欲しいですね。

(5)その他
フリートークで、海外出張中の佐々木さん(IIJmioの中の人)がライブストリーミング出演していたので、記念に写真を貼っておきます。以前のIIJmio Meetingで堂前さんがインフルエンザに罹患しつつもライブストリーミング出演していたことを思い出しました。

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